名古屋大学大学院工学研究科 応用物質化学専攻 理論計算化学分野 岡崎研究室

English

Ⅲ.量子化された系の計算機シミュレーション

1. 溶液系・生体分子におけるプロトン移動の量子動力学

量子動力学シミュレーションによる溶液系やタンパク質などの凝縮系における化学反応の研究に取り組んでいます。分子の量子ダイナミクスを記述する方法論の開発:量子-古典混合系近似に基づいた運動方程式の導出からその手法を用いた実在系の量子シミュレーションまで行っています。このような手法に基づいて、溶液中のプロトン移動反応におけるトンネル移動や振動励起に端を発した熱的過程が溶媒分子の運動に助けられてどのようにして起こるのか、その反応機構について量子動力学的な側面から研究しています。これにより、反応における詳細な分子運動の描像を明らかにし、実験や反応理論で得られている知見よりもさらに深い反応機構の理解を目指しています。

プロトン移動反応の模式図。時間依存のシュレーディンガー方程式から出発して、振動励起に端を発して振 動緩和で終了する熱活性過程(赤の矢印で表示)に加えて、トンネル移動反応(青の矢印で表示)も自然に起こるシミュレーションを行っています。

2. 溶液系における分子振動量子動力学

溶液系などの凝縮系において、分子振動緩和や振動状態間デコヒーレンス(量子力学的な状態間の重ね合わせ状態の消失)といった分子振動の量子動力学を取り扱うことのできる分子シミュレーション手法の開発を進めています。これまですでに、経路積分影響汎関数理論に基づいた方法論や、量子-古典混合系近似に従った方法論を展開してきており、凝縮系における量子系の非断熱な時間発展を分子レベルで解析できるようになってきています。特に最近は、実験研究者である京大の松本先生や電子状態計算の東大の山下先生との共同研究で、この計算を金属結晶表面に吸着した原子のフォノン運動に対して測定される量子ビートへと展開しようとしています。

モデル系ではありますが、経路積分影響汎関数理論を用いて計算すると、t=0において溶質の分子振動が コヒーレントな状態、たとえば基底状態と第一励起状態の二つの波動関数の重ね合わせ状態で表されるとき、溶媒分子との相互作用により、時間がたつにつれて 密度行列の非対角項の振幅は時間とともに小さくなっていきます。これは、実験的に測定され、世界的に注目されている分子振動の量子ビートに相当するものです。

PAGE TOP